止めよう!地球温暖化 ③「止めよう!地球温暖化 【CCUS】カーボンマイナスと土壌改良」


 

 当農園では、次のような脱炭素の取組をしています。

  1. 40年ほど前から化石燃料を使わないバイオマス暖房機を導入し、CO2排出量の削減に取り組んできました。
  2. また、ソーラーシェアリングを行い、しいたけ栽培用人工ホダ場の上で、太陽光発電を行うなど、脱炭素に取組んだ原木しいたけ栽培をしてきました。 
  3. そして、2023年秋から、「止めよう!地球温暖化 【CCUS】カーボンマイナスと土壌改良」と題しまして、大気中のCO2(二酸化炭素)を減少させ、同時に、畑などの土壌改良を行うプロジェクトを計画しています。これは通常、行われているCO2排出の削減ではありません。CO2の排出削減も、もちろん必要な事ではありますが、少しはCO2を排出することになります。今回事業ではCO2そのものを減少させます。カーボンマイナスです。

 

 

そして、当農園では上記3.「止めよう!地球温暖化 【CCUS】カーボンマイナスと土壌改良」を2020年頃から企画し、2023年秋から、本格的に始めました。

 

この方法の有効性は農水省などのサイトにあり(2019年改良IPCCガイドラインにもあります。エビデンスなどはまとめて後述します。)ますが、なぜかあまり普及していません。

カーボンマイナスに非常に有効なこの方法を日本全国に広めるため、具体的な手段や効率性などを、研究していきたいと考えています。

 

 

最近、恐ろしい異常気象が多発しています。

その最も大きな原因は、地中に長い間眠っていた石油や石炭などの化石燃料を燃やして、温室効果ガスであるCO2を大気中に排出していることにあります。(IPCCの資料などから)

 

では、逆に、大気中のCO2を炭にして、農地などに入れるとどうなるでしょう?

大気中のCO2は減少します。

そして、この炭は土壌改良剤としての効果があります。

 

▼プロジェクトの要約

  • プロジェクトの目的

(A)最終目標は、気球温暖化を抑制し、最近頻発している、豪雨、豪雪、猛烈な台風、異常高温などの異常気象を緩和する事、および、同時に、バイオ炭の特性を活かして農地の土壌改良を行うことにより、地球温暖化で危機に瀕している農業の振興に役立てることです。

 

(B)その前段階として、本プロジェクトの留意点である、CCUS事業の合理的方法の案出およびコスト算出、およびバイオ炭の効果的な使用方法などを調べ、このCCUS事業が一般に広く拡大しやすくなるような方法を案出したいと考えています。

(C) バイオ炭によるCCUSは、難しい技術を必要としません。効率は悪くなるかもしれませんが、だれでもできる技術です。つまり、だれでもカーボンマイナスに取り組むことができるのです。

 

  • プロジェクトの概要

〇 プロジェクト名は「止めよう!地球温暖化 【CCUS】カーボンマイナスと土壌改良」です。具体的には、次の事業を実施します。

  • 今年の冬以降、原木栽培しいたけの使用済みホダ木などの木質系バイオマスを原料としてバイオ炭を製造します。【この工程で、大気中のCO2をバイオ炭に変えたことになります。】【伐採したしいたけ原木林は、自然に萌芽更新して、元の原木林に戻る際、光合成により大気中CO2を吸収し減少させます。】
  • そのバイオ炭を土壌改良剤として、農地(畑や家庭菜園)などに施用します。【この工程で、大気中のCO2を土壌中に貯留し、かつ、土壌改良も行います。】
  • このCCUS事業の合理的な方法の案出。【本プロジェクトが一般に拡大するような具体的方法を考えます。】

〇 プロジェクトは、規模(2種類)と実施個所(3種類)を自由に設定することができて、合計で9種類あります。

〇 このプロジェクトは、しばらくの間、冬季に行います。これは、炭化炉の余熱を、しいたけ栽培用ビニールハウスの暖房に使うためです。(暖房燃料として化石燃料を使うことに比べ、CO2排出量の削減になります)

〇 このプロジェクトの根拠は、農水省やIPCCの資料にもあるもので、「大気中CO2を土壌中に貯留する(大気中CO2を減少させる)」点について、確実な効果があると思われます。(エビデンス等はまとめて下記に記載します)

 

☆ このバイオマスを原料とした「【CCUS】カーボンマイナスと土壌改良」のプロジェクトは、世界中で行われようとしている他のCCS事業と比べればイニシャルコストが低く、合理的な方法さえ確立すれば、多くの方が実施できることから、地球温暖化防止の切り札的方法となると考えています。

 皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

 

 

▼用語の説明

  • CCUS

「CCUS]とは、Carbon dioxide Capture Utilization,Storage の略で、大気中のCO2(Carbon dioxide)を回収し(Capture)、バイオ炭に変えて畑などに土壌改良剤として有効利用し(Utilization)、同時に、バイオ炭が難分解性であることを利用して、土壌中に貯留(Storage)させることです。下記の「CCS]と比べ、Utilization(有効活用)の分だけお得な事業です。

  • CCS

「CCS」とは、(Carbon dioxide Capture ,Storage)の略で、上記のCCUSと比べ、「U」を行わないものです。これは、大気中のCO2を回収し(Capture)、何らかの形で貯留(Storage)しようと言うもので、世界中で研究が始まっているようです。

  • バイオ炭

「バイオ炭」とは、ある一定の条件のもとに製造される「炭」です。普通の「炭」は燃料に使用されますが、バイオ炭は農地などに土壌改良剤として施用されます、(詳細は下記)

 

▼今回のプロジェクトはCCUUS?

上記に記載しましたように、通常、CO2を回収し、有効利用し、貯留する事業は「CCUS」となります。

今回のプロジェクトでは、さらにプラスαがあります。それは美味しい原木しいたけを食べることができるという点です。

これは、バイオ炭の土壌改良剤としての有効利用(Utilization)に、さらもう一つ有効利用「U」があるその「U]の文字を足した方が良いのかなと思います。

従いまして、本プロジェクトを実施する際には、「CCUUS」と表記することを考えています。

 

▼自己紹介

高橋農園と原木しいたけ栽培

 私が生まれる前、私の祖父が茨城県古河市で、原木を使ったしいたけ栽培(原木しいたけ栽培)を始めました。

正確には分かりませんが、今から70年ほど前の事です。

   

 経営者(私)と雑木林の中のホダ場

 

 原木栽培のしいたけは、日本では古くからある栽培方法なのですが、重労働でかつ手間がかかることなどから敬遠されつつあり、最近ではより効率的な栽培方法である菌床栽培が増えつつあります。(菌床栽培とは「原木」ではなく、原木を粉砕した「おがくず」にしいたけ菌を植え付ける栽培方法です。)

 2020年では、原木栽培の生しいたけの日本でのシェアは約7%(農水省の資料から)であり、残りが菌床栽培のしいたけです。原木しいたけは、かなりの貴重品となっています。(乾椎茸の場合は割合が変わります。) 

 しいたけを収穫しやすいように、太くて重いホダ木を並べています 

 

しいたけは自然界では、枯れた「木」に生えます。おがくずに生えるわけではありません。

つまり、原木栽培の方が、より天然に近い栽培方法と言えます。

 

当農園では、農薬や化学肥料を全く使わず、原木しいたけを生産しています。もちろん、ポストハーべスト農薬も使っていません。

 

 

高橋農園における脱炭素の取組

 高橋農園では、70年の間に育んだ技術と伝統を生かし、栽培期間中には農薬不使用で栽培しています。

そして、かねてから興味のあった脱炭素の考え方を取入れた下記の栽培方法を実施し美味しい原木しいたけの生産に取組んできました。

  1.  40年以上前から、化石燃料を使わず、使用済みホダ木(しいたけ栽培に使う原木をホダ木と呼びます。=バイオマス。)を燃料として、バイオマス暖房を行い、化石燃料を使わないことで、CO2の排出削減を行ってきました。(CO2排出量の削減)
  2.  2017年からソーラーシェアリングでの栽培を実施し、脱炭素に取組みました。これは、しいたけ栽培設備の上で太陽光発電を行いつつ、その下では、原木しいたけ栽培をするというものです。日本全国的に見ても、あまり事例はありません。(CO2排出量の削減)
  3.  そして、今回、「止めよう!地球温暖化 【CCUS】 カーボンマイナスと土壌改良」と題した、究極ともいえる脱炭素の取組を計画しました。(大気中CO2の削減と農地の土壌改良を同時に行います。)  

 

 上記1.に関わる原木しいたけの使用済みホダ木を燃料とするバイオマス暖房機(現在は、バイオ炭を製造することはできません、改良が必要です。)

 

上記2.ソーラーシェアリングを上から見たところ、パネルの下にホダ木があります

 

上の写真の内側、ホダ木が並んでいます。上にソーラーパネルが少しだけ見えます

 

 

 

▼プロジェクトを立ち上げたきっかけ

 

 近年、日本を含めた世界各地で異常気象や豪雨災害などが起こり、多くの皆様方が被災されております。衷心よりお見舞い申し上げます。

 最近でも、世界中のあちこちで豪雨による災害が多発している他、「観測史上、最高気温」と言う言葉も良く聞かれます。

 

守りたい美しい日本の自然

 

 

 「農家が8割減る日 主食はイモ、国産ホウレンソウ消滅? – 日本経済新聞 (nikkei.com)」と言う記事が、最近、日本経済新聞に載りました。

かなり衝撃的です。

 

 

 新聞記事で「 スイスの氷河、85年間で半減 温暖化影響しペース加速 融解深刻、災害リスクも」と言う報道がありました。スイスの氷河を含め世界中の氷河が縮退しているようです。

スイスの氷河の写真  よく見ると、氷河の上に白いシートのようなものが被せてあります。

氷河が解けるのを防ぐためだそうです。

 

 

 NATIONAL GEOGRAPHICの記事では「南極 崩壊する氷の大陸」と言うものがありました。南極の氷は北極と違い大陸の上にあるので、もし、解ければ地球の海水面が上昇してしまいます。

 

 

何の写真なのか、分かりにくいかもしれません。 シベリアの永久凍土の航空写真です。

最近、このシベリアにおいても、地球温暖化の記事が増えてきました。

 

 

 CNNの記事では、「グリーンランドの氷床融解で30センチ近い海面上昇は不可避 欧州研究」と言うのもありました。

 YAHOOニュースでは「海面上昇で国が水没する? 南太平洋のツバルやキリバス」の記事もありました。

 

 これら原因は、温室効果ガスの増加による地球温暖化であると言われています。 

 

 地球は約46億年前に誕生しと言われていますが、色々調べてみると、地球上では今までに生物の「大量絶滅」と呼ばれることが、少なくとも5回起こっていることが分かっているようです。

大量絶滅とは、短い期間(とは言っても**万年と言う期間ですが)に70%~90%以上!もの生物種が絶滅したというものです。

この原因は、正確には分からないことが多いようなのですが、一つ共通していることがあります。

それは何らかの原因で「地球環境の急激な変化」が起こり大量絶滅を引き起こしたと言うものです。

 そして、現代において、同じように地球環境の急激な変化が起りつつあり、6回目の大量絶滅が起こっている・と主張する科学者もいらっしゃるとのことです。NewsSphereよりhttps://newsphere.jp/sustainability/20220128-1/ 

 

 

地球46億年の歴史を踏まえて現状を考えてみると、注意すべき点があります。

現代は、温暖化が進んでいると言われていますが、実は、地球の長い歴史で見れば、比較的寒冷であるという説もあることです。

逆に言えば、条件が揃うと、今よりも、もっともっと温暖化が進む可能性があります。

 

 

 気温の上昇や豪雨災害はCO2などの温室効果ガスの増加による地球温暖化が原因と言われており、世界中で温室効果ガスの排出削減が叫ばれています。(日本政府も2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しています。) 

 

 しかし、これらの具体的方法の大半はいずれも「CO2排出の削減」です。つまり、少しはCO2を排出しますので、大気中の濃度は増えることになります。(増加速度は減少します)

 排出の削減はもちろん必要な事ですし、やらねばなりませんが、大気中のCO2が増えてしまうことは残念です。 

 

 今回のプロジェクトでは、最も影響が大きいと言われるCO2について、①大気中のCO2を減少させること(「排出」の削減ではなく、大気中のCO2を減少させます)、および②その過程で畑や家庭菜園などの土壌改良を図ること、の二つの事業を一度に行おうというものです。 

 

 地球の歴史の中で、「古生代・石炭紀」と呼ばれる時代がありました。これは、恐竜が活躍する時代のさらに2億年ほど前の時代です。この時代では、木のような植物が枯れた後、微生物によって分解されずそのまま残り、大量に地面に埋もれ、長い年月をかけて石炭になったそうです。

 つまり、大気中のCO2が光合成によって植物に取り込まれ、それが「石炭」として、土壌中に貯留されたと言うことがあったそうです。

 

 今回のプロジェクトは、この石炭紀に似た現象を、現代で、再現しようと言うものです。

 石炭ではなく、バイオ炭を土壌に貯留するわけです。 

 

 さらに余談ですが、この「古生代・石炭紀」はおよそ3億年前に終わっています。なぜ、石炭紀以降は石炭ができなくなったか???   

 その理由は、・・・

 3億年よりも前は、木のような植物の固い成分である「リグニン」などを分解できる生物が少なかったそうです。従って枯れた木は倒れた後、あまり分解されず地面に埋もれ、長い期間をかけて石炭になりました。

ところが、約3億年前、しいたけ菌の仲間である「担子菌類・白色木材腐朽菌」が誕生しました。その後は、担子菌類の持つリグニン分解酵素などが、固いリグニンなどを分解できるようになった、すなわち、石炭の材料となる固い木が分解されて無くなってしまった石炭ができなくなった・と言う説があるそうです。しいたけ菌(の仲間が)がこのようなことにまで関わっていたことを知った時は、ビックリしました。

東京大学 農学生命科学研究科 研究成果より 

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120702-1.html

 

 今回のプロジェクトは、別記のエビデンスにもあるように、大気中のCO2を減少させることでは、効果があるものなのですが、残念ながら、普及しません。

 その理由の一つに、大量のバイオマスを保有している人は農家ではないことが多く、バイオ炭を施用する農家は大量のバイオマスを持っていないことがあるように感じています。 当農園は原木しいたけの生産者で、木質バイオマスを大量に保有し、かつ、農家でもあるためバイオ炭の製造と農地への施用を橋渡しするベストポジションにいると考えています。

 

 もし、このまま地球温暖化が進めば、子たちの未来に暗雲が立ち込めます。

CO2の排出は私たちの世代が深くかかわってきたとも言えるかと思います。

数十年後、この子たちの世代が地球温暖化の悪影響を受けず、安寧に暮らせるよう、このプロジェクトを成功させたいと考えています。

 

 

▼プロジェクトの内容

 このプロジェクトは、次の1.~2.の2段階の事業と、大自然が行ってくれる3.「光合成による大気中CO2のバイオマスに変えること」の、合計3段階から成り立ちます。

  1. 使用済みホダ木などを原料としてバイオ炭を製造する。【 大気中CO2が変化したバイオマスから炭を製造する工程】
  2. バイオ炭を畑や家庭菜園などに施用する。 【バイオ炭に変化した大気中CO2を土壌中に貯留する工程】
  3. 伐採されたしいたけ栽培用原木林は、植林などをしなくても、自然に萌芽更新し、およそ15~20年で元の原木林に戻る。これは、原木しいたけ栽培を続ければ、長期間、繰り返しの継続が可能です。 【大気中のCO2を光合成によりバイオマス(樹木など)に変える工程。ここで、大気中のCO2が減少します。)

 実施規模に応じて、Aプラン(小規模)とBプラン(中規模)の2種類があります。

 また、しいたけ栽培用のビニールハウスが3か所あり、バイオ炭の炭化炉は最大3か所設置できます。

 

上記の二つを、組み合わせると下表のように9種類の事業規模が考えられます。

集められた資金によって、適切な組み合わせプランを実施します。

 

以下、プロジェクト内容を詳しく説明します。

 

 

Aプラン(小規模)の場合】

 Aプランは、イニシャルコストが低いのですが、作業の大半が手作業となるため、人件費がかかる方法です。その分、バイオ炭の製造コストが上がる可能性があります。

 

1. 使用済みホダ木を原料としてバイオ炭を製造する。【大気中CO2が変化したバイオマスから炭を製造する工程】

  •  現在、高橋農園が所有している既存のバイオマス暖房機を自分で改良して、バイオ炭の炭化炉を自作し、それを使ってバイオ炭を製造します。
  • バイオマス暖房機の改良に関しては、すでに、試作品は完成しており、バイオ炭の製造にも成功しています。

 

 高橋農園が所有している使用済みホダ木の一部

 この写真だけで約30tの使用済みホダ木があります。

 去年までは、この使用済みホダ木は、バイオマス暖房機の燃料として使うか、販売するかのどちらかで、いずれにしても、最終的にはCO2になっていました。このCO2は、数年前~30年前に、原木林が大気中CO2を吸収したものですので、この部分はカーボンニュートラルと言えます。

 今年から今回のプロジェクトを実施することにより、この使用済みホダ木の一部がバイオ炭となって、土壌中に貯留されることになります。

 つまり、その分が、カーボンマイナスです。

 

  • バイオ炭の原料には、主として原木しいたけ栽培に使用した使用済みホダ木を使用する他、いろいろな木質系バイオマスも試してみる予定です。 
  • 炭化炉の余熱はしいたけ栽培用ビニールハウスの暖房に使用するため、バイオ炭の製造は、暖房を行う時期となります。おおよそ、12月~3月です。
  •  Aプランの場合、イニシャルコストは低いのですがが、すべての作業に人手がかかるため、人件費の占める割合が高まります。
  •  このプランにおいて、製造できるバイオ炭の量は、炭化炉の効率が悪く、少量のため、この歩留まりを上げる方法を案出することも、プロジェクトの目標の一つです。

バイオ炭のサンプル画像

燃料用の木炭のような細長いものではなく、写真のように粒状になります。

 

 

2. バイオ炭を畑や家庭菜園に施用する。 【バイオ炭に変化した大気中CO2を、土壌中に貯留する工程】

  • 小職が所有してる畑の他、協力農家を募り、畑などにバイオ炭を施用します。現時点で、1件の農家のご協力が得られています。
  • 例えば、一つの圃場の半分にバイオ炭を施用、他の半分はコントロールとして通常の栽培を行うというバイオ炭施用の実験を行います。そこで、できた作物の品質や収量、病害虫などを比べます。
  • また、2か所以上の圃場で行う場合は、2種類以上の品目を試験する予定です。
  • 今年は、農家にバイオ炭の試験を行ってもらうため、農家へは無償でバイオ炭を提供する予定です。
  • このAプランを実行する際、次の点の一部または全部を調べて、今後のCCUS事業の発展に役立てます。

 (ア) このAプランでのCCUS事業のコストの検証。   

(イ)使用済みホダ木(または木質系バイオマス)をバイオ炭に変えた場合の歩留まり。(収率)

(ウ)製造したバイオ炭の科学的分析。

(エ)製造したバイオ炭を販売する場合のコスト計算。

(オ)バイオ炭に適した作物の選定、検証。

(カ)バイオ炭を施用した作物の生育状況や品質、収量などを協力農家に依頼して、データを取ってもらうこと。

(キ)炭化炉の余熱をしいたけ栽培用ビニールハウスの暖房に使用した際の、暖房効率について。

(ク)炭化炉の改良

 

3. 伐採されたしいたけ栽培用原木林は、植林などをしなくても、自然に萌芽更新し、およそ15~25年で元の原木林に戻る。 【大気中のCO2を光合成によりバイオマス(樹木など)に変える工程。ここで、大気中のCO2が減少します。)】

この工程は、Aプラン、Bプラン共通です。

  • 原木しいたけの場合、使用する原木は、主にコナラやクヌギです。しいたけ栽培に使う場合、その原木林をほぼ全て伐採します。この際、その森林は一時的にはげ山になります。しかし、コナラやクヌギは、伐採された翌春には、切株から新たな芽を出して、その芽が成長し、15~20年くらい(寒い地方ではもっと年月を要する場合があります)で、元の林に戻ります。 このことを「萌芽更新」と呼びます。

左の写真は、しいたけ原木林を伐採した後、約1年後の写真です。 たくさんの切株からたくさんの芽が出ています。

右側の写真は、一つの切株の拡大写真です。 (たくさんの枝のように見えるものの中には、一部、ブッシュもあります。)

 

 

 

【Bプラン(中規模)の場合】

 Bプランは、バイオ炭の炭化炉、およびバイオ炭を販売する機材、バイオ炭の保管庫などを新規購入・設置し、Aプランよりもかなり大きな規模で、プロジェクトを行います。必要な資金の多くは、新規購入する設備費となります。

 

1. 使用済みホダ木を原料としてバイオ炭を製造する。【大気中CO2が変化したバイオマスから炭を製造する工程】

  •  現在、高橋農園が所有している既存のバイオマス暖房機を自分で改造して、バイオ炭の炭化炉を自作し、それを使ってバイオ炭を製造します。

 

 高橋農園が所有している使用済みホダ木

 この写真だけで約30t以上の使用済みホダ木があります。

 去年までは、この使用済みホダ木は、バイオマス暖房機の燃料として使うか、販売するかのどちらかで、いずれにしても、最終的にはCO2になっていました。数年前~30年前に、林が大気中CO2を吸収したものですので、この部分はカーボンニュートラルと言えます。

 今年からは、この使用済みホダ木の一部がバイオ炭となって、土壌中に貯留されることになります。

 つまり、その分が、カーボンマイナスです。

 

  • バイオ炭の原料には、主として原木しいたけ栽培に使用した使用済みホダ木を使用する他、いろいろな木質系バイオマスも試してみる予定です。 
  • 炭化炉の余熱はしいたけ栽培用ビニールハウスの暖房に使用するため、バイオ炭の製造は、暖房を行う時期となります。おおよそ、12月~3月です。このBプランの場合、CCUSのコストに占める設備費用の割合が高いため、冬季以外のバイオ炭製造の工夫も考えます。その際の余熱の有効利用をどうするのかがポイントです。
  •  Bプランの場合、イニシャルコストが高くなる分、バイオ炭の製造・販売は効率的になり、人件費が抑えられることを期待しています。現時点では、バッチ処理方式を予定しているので、バイオ炭製造に関しての、人件費の占める割合は一定程度あります。(連続運転方式であれば、さらに人件費のコストを下げることができる可能性が有ります。)
  •  Bプランにおいては、かなりの量のバイオ炭を製造できると考えられるので、バイオ炭の施用を協力してくれる農家を探す予定です。

2. バイオ炭を畑や家庭菜園に施用する。 【バイオ炭に変化した大気中CO2を、土壌中に貯留する工程】

  • 自己所有農地と1件の協力農家の他に協力農家を募り、畑などにバイオ炭を施用します。
  • 例えば、一つの圃場の半分にバイオ炭を施用、他の半分はコントロールとして、バイオ炭施用の実験を行います。そこで、できた作物の品質や収量、病害虫などを比べます。
  • また、なるべく多くの品目の作物に施用して、品目別の効果を調べる予定です。
  • 今年は、農家にバイオ炭の試験を行ってもらうため、農家へは無償でバイオ炭を提供する予定です。
  • このプランを実行する際、次の点の一部または全部を調べて、今後のCCUS事業の発展に役立てます。

 (ア)このBプランでのCCUS事業のコストの検証。   

(イ)ホダ木(または原料)をバイオ炭に変えた場合の歩留まり。(収率)

(ウ)製造したバイオ炭の科学的分析。

(エ)製造したバイオ炭を販売する場合のコスト計算。

(オ)バイオ炭に適した作物の選定、検証。

(カ)バイオ炭を施用した作物の生育状況や品質、収量などを協力農家に依頼して、データを取ってもらうこと。

(キ)炭化炉の余熱をしいたけ栽培用ビニールハウスの暖房に使用した際の、暖房効率について。

(ク)炭化炉の改良

(ケ)冬季以外の時期にバイオ炭を製造できる可能性を探ること

(コ)J-クレジットの研究

 

3. 伐採されたしいたけ栽培用原木林は、植林などをしなくても、自然に萌芽更新し、およそ15~25年で元の原木林に戻る。 【大気中のCO2を光合成によりバイオマス(樹木など)に変える工程。ここで、大気中のCO2が減少します。)】

この工程は、Aプラン、Bプラン共通です。

 

 

 

▼プロジェクトの内容に関する補足

 

1. プロジェクトのエビデンス

 このプロジェクトの方法論は、小職が考えたものではなく、農水省やIPCC(気候変動の関する政府間パネル)のHPなどにも記載があるものです。

(1) 「IPCC 第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠 政策決定者向け要約(SPM)」

 IPCCの報告書である「IPCC 第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書 気候変動 2021:自然科学的根拠 政策決定者向け要約(SPM)」には、

「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」

「2019年の大気中のCO2濃度は410ppmであり、工業化前より約47%高くなっている世界平均気温(2011~2020年)は、工業化前と比べて約1.09℃上昇陸域では海面付近よりも1.4~1.7倍の速度で気温が上昇北極圏では世界平均の約2倍の速度で気温が上昇陸域のほとんどで1950年代以降に大雨の頻度と強度が増加強い台風(強い熱帯低気圧)の発生割合は過去40年間で増加。」などの記載があります。

WG1 第1作業部会(自然科学的根拠) | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

 

(2)バイオ炭がCCUSとして機能する根拠、および土壌改良剤として機能する根拠(農水省)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/biochar/attach/pdf/top-4.pdf

 

(3)しいたけ原木林の萌芽更新しいたけ栽培用原木が伐採された後、その跡地が萌芽更新され、元のしいたけ原木林に戻ることに関する根拠(林野庁)https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/jyunkanriyou/index.html

 

(4)バイオ炭の農地への施用とJ-クレジットに関する資料(農水省)https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/220630.html

 

(5)バイオ炭の詳細(農研機構)https://biochar.jp/cms/wp-content/uploads/2021/02/symposium2021.01.27.kishimoto.pdf

 

 

2. 原木しいたけとCCUS事業の相性の良さ

  • 原木しいたけ生産者は、バイオ炭の原料となる使用済みホダ木(バイオマス)を大量に保有していること。高橋農園では、現時点で、約100t以上の使用済みホダ木を所有しています。
  • 使用済みホダ木には、推定ですが、原木の時の半分くらいの炭素分(C)が残っていると思われます。この残存している炭素分(C)をバイオマスに変えます。
  • 原木しいたけ生産者は、日本全国各地で栽培を行っており、製造したバイオ炭を地元でCCUS施用することにより、バイオ炭輸送によるCO2排出量を抑えられること。
  • 原木しいたけ生産者は、毎年、新たに原木を仕入れ、毎年、新たな使用済みホダ木が生まれます。また、伐採した原木林は15~20年ほどで、元の原木林に戻ります。このサイクルを最大限に利用して、本プロジェクトのCCUS事業を行えば、土壌中でのバイオ炭の半減期の長さ(100年~1000年と言われています。詳細は下記)も考慮すると、土壌中に貯留されるバイオ炭は、年々増えることになり、その分だけ大気中のCO2は減少します。
  • 原木しいたけ農家の場合、しいたけ栽培用原木の調達までは、元々行っているので、新たに、原木伐採などに関わる追加のCO2の排出はありません。

 

3. バイオ炭について

  • バイオ炭は、難分解性であるため、土壌中に施用すると、長い期間、分解されずにそのまま、残ることが知られています。土壌中での半減期(炭が分解されて、最初の半分に減る期間)は100年~1000年以上と言われています。(下記、農水省の資料から)つまり、貯留した分だけ大気中のCO2が減少し、地球温暖化を止めることができる」と言うものです。
  • 農水省の資料では100年後の炭素残存率は80~89%となっています。
  • 「バイオ炭」とは「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義されています。(2019年改良 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ガイドラインに基づく)
  • その「2019年改良IPCCガイドライン」に農地・草地土壌へのバイオ炭投入に伴う炭素固定量の算定方法が追加されました。つまり、バイオ炭は、その製造方法や品質に条件があります。(炭なら何でも良いわけではない。例えば輸入炭はNG。)
  • 地力増進法(昭和59年法第34号)の政令で、木炭は土壌改良材に指定されています。

 

 

▼プロジェクトの展望・ビジョン

〇 今回のプロジェクトは、バイオ炭の原料として、主として使用済みホダ木を使いますが、原料としては、他にもいろいろのものが考えられます。それらを利用すれば、さらに、土壌中に貯留されるバイオ炭の量を増やすことができます。

 

 

〇 このプロジェクトは、実行すれば、先に示したエビデンス資料により、効果は必ずある・と言えるレベルのものです。具体的方法もあるので、後は実行するだけです。

 

しかし、残念ながら、一般には広くは普及していません。

その理由や背景はいろいろあると思います。

  • バイオマスを大量に保有している個人・団体とそれを使う畑作農家は別であることが多い。
  • 炭を農地に施用する方法は古来から日本でも行われてきました。その目的は、土壌改良剤としての効果で、CCSを目的としたものではありませんでした。その炭(≒バイオ炭)の製造では、必ずしもJ-クレジットに認定されるものではない場合もあるかもしれず、統計的にも正確には分かりにくい状態のようです。
  • 炭を畑に施用することが、地球温暖化防止につながることは、あまり、一般には知られていません。
  • 現代の農業では、経営的な効率性が求められます。バイオ炭の販売価格との問題。
  • 現時点では、J-クレジット価格が、バイオ炭の予想販売単価と比べ、かなり低いこと。
  • バイオ炭を畑作農家が自ら製造する場合、人件費の部分が不透明になりがちです。この場合、バイオ炭の製造コストがはっきりしません。

 逆に言えば、これらの背景や問題を解決できれば、バイオ炭の農地への施用が、古くからおこなわれてきた農業技術の再生として、自然に拡大し、大気中のCO2が農地に貯留され、かつ、異常気象に悩む農業への貢献が期待できることになります。

 

 今回のプロジェクトでは、バイオ炭の価値を「土壌改良剤としての価値」と「カーボンオフセットとして価値」の二つに分けて可能な限り正確に算出し。かつ、バイオ炭の製造コストを加味して、バイオ炭の適正な販売価格を算出したいと考えたいと思います。

 

この販売単価が適正であれば、バイオ炭によるCCUSは、自然に、多くの方に拡大します。

 

そして、いつの日か、カーボンマイナスになり、かつ、農業の振興にも役立ちます。

 

そして、将来、異常気象が少しでも緩和されるよう、願っています。