※下記に記載するのは、あくまで一般論です。プロの生産者は、いろいろ工夫するので、下記に当てはまらないことも多いです。また、地域によっても変わります。下記に記載した時期は茨城県を念頭に置いています。

原木の入手

 

しいたけの原木は、紅葉が終わるころから翌年3~4月ころまでに入手します。

この際、必ず、生きている木を伐採したものを仕入れます。

しいたけ菌が死物寄生菌なので、菌が伸長するためには木が枯れている必要がありますが、そうかといって、枯れた木を伐採した原木を仕入れて植菌すると必ず失敗しますので、注意が必要です。

自分で原木を伐採する方法(自伐)と原木を購入する方法があります。

また、原木には「コナラ」や「クヌギ」やそのほかの種類もあります。樹種が違うと、植菌後の管理や適した品種など、微妙に違うので、注意が必要です。

また、原木しいたけを販売をする場合は、原木やホダ木に関する「指標値」という規制値がありますので、林野庁のHPなどでご確認をお願いいたします。

原木を自伐する場合 : 原木を自伐する場合は、伐採時期やその方法、樹種などを考える他に、関係機関への届け出などが必要な場合があります。

原木を購入する場合 : 事業が目的の場合は、専門業者に依頼することになります。趣味の場合は、ホームセンターなどでも購入できます。

コナラ : 特に生しいたけの場合は、良く使われる樹種です。比較的栽培がし易いのが特徴です。

クヌギ : 乾椎茸栽培の時に使われることが多い樹種です。しいたけの品質は、クヌギが最も良いといわれています。成型菌やオガ菌などの場合で施設栽培でのホダ木つくりの場合は、難しい場合があります。

 

種菌

種菌には駒菌(木片駒)、成型菌、オガ菌などがあります。

駒菌(木片駒) : 文字通り、木を削ってしいたけの種菌を植え付けたもの。しいたけ菌の蔓延するスピーが最も遅い。乾しいたけ栽培や林内での栽培が多い。原木1本あたりの植菌数は、3種類の中で最も少く植菌することが多い、そのために種菌コストは最も低い。しいたけが収穫できるまでの期間が最も長く、逆にホダ木の寿命が長くなる傾向にある。

成型菌 : 下記のオガ菌を弾丸の形に成型したもの。乾燥防止のために発泡スチロールの蓋が付いていますが、「蓋なし成型」と言って、蓋がないものもあります。原木1本当たりの植穴数が駒菌よりも多くすることが普通で、種菌コストが高い反面、ホダ化が早く、ホダ付き率をよくすることが容易いという特徴があります。

オガ菌 : 3種類の中で最もホダ化が早く、施設栽培でのホダ木つくりや早生栽培などに向いています。植菌ロボットなど機械化もできるが、コストが安くはない。クヌギの場合、栽培が最も難しい。

品種の選定

しいたけにはたくさんの品種があります。多すぎて、正直言って、小職にもいくつあるか分かりません。

品種の名前は、「252」というような番号の場合や、「つき」のように日本語の場合などもあります。(「シャインマスカット」のようなしゃれた名前はあまり聞きません)

品種にはいくつかの種類があります。

用途による分類 しいたけが発生する温度による分類
生しいたけ用品種 高中温菌、中高温菌、中温菌、中低温菌
乾椎茸用品種 中低温菌、低温菌

例えば、上の表の中低温菌にいろいろな品種があります。品種ごとに、しいたけが収穫できる時期や、温度への感受性、栽培の特徴が違います。

 

植菌

 

植菌は12月ころから翌年4~5月ころまでに行います。

原木に穴をあける : 電動ドリルなどで原木に穴をあけます。深さは3cm前後にします。

深く穴をあけると、しいたけ菌が原木の心材近くまでまん延しやすくなる一方で、過乾燥になりやすい、あるいは穴をあけるのに時間がかかる、ドリル錐の寿命が短くなるなどの欠点があります。

穴が浅い場合、逆に、穴があけやすく錐も長持ちしますが、原木の心材にしいたけ菌が蔓延しにくくなります。

しいたけ菌は、原木の縦方向(道管の方向)には伸長が早く、横方向や芯に向かっての方向には遅い性質があるので、穴をあける場合、縦方向には荒く、横方向には密にあけます。

種菌を入れる : 駒菌や成型菌の場合、樹皮と平らになるように種菌を入れます。深く入れすぎると、内樹皮(アマカワとも言います)にしいたけ菌が蔓延しにくくなり、きのこの発生が悪くなる場合があります。

 

仮伏せ

原木にしいたけ菌を植菌した後の管理方法の事を指します。その目的は、植菌直後のしいたけ菌を寒さや乾燥から保護して、しいたけ菌の伸長を助けることです。植菌したホダ木を、棒積みなど、密に並べておくことが多いです。

冬場の寒い時に植菌した場合 : 植菌したホダ木を、ビニールや遮光資材などで覆います。(遮光資材を使わないと、冬とはいえ、温度が上がりすぎる場合があるので注意が必要です。)温度は20℃以下が良いでしょう。原木が乾きすぎている場合は、散水する場合があります。

春に植菌した場合 : 暖かくなっているので、保湿だけで十分な場合があります。保温をしすぎると、高温障害を起こす場合があるので注意が必要です。

 

本伏せ

本伏せとは、仮伏せの後の管理を言います。

最低気温が10℃以上になったころを目安に、ホダ木の「本伏せ」を行います。これは、それまで仮伏せ密な状態だったホダ木を、よろい伏せや井桁積みなど、酸素が流通しやすい状態に組み替えることで、仮伏せで完全に活着した原木のしいたけ菌の伸長を促すことが目的です。

ホダ木から芽が出ていたり、木口などからカルスの発生が見られる場合があります。この状態を「原木が生だ」という言い方をします。しいたけ菌は、枯れた木にしか蔓延できないので、原木が生の状態は好ましくありません。そのホダ木は乾燥するような管理を行います。場合によっては、そのホダ木は梅雨の雨がかからないようにします。

逆に、胴枯れ菌やアオカビが見られたら、ホダ木の水分が少なくギル証拠です。地伏せを行うか、散水を多くして水分補給に努めます。

 

天地返し

梅雨のころや秋に、ホダ木の上下と表裏を反対にする「天地返し」を行います。

この天地返しには、①ホダ木をひっくり返すことによるホダ木内部の水分状態の均一化、適正化と②天地返しは手作業で行うことによる物理的刺激によるしいたけ菌の伸長補助があります。

しいたけの原基ができる前であれば、天地返し直後の散水や雨は、より効果的です。

しかし、品種と天地返しを行う時期によっては、すでにしいたけの原基ができている場合があります。天地返しをした後、不用意な散水をしたり、予定外の降雨があると、「走り子」と言って、しいたけが発生してしまうことがあるので、注意が必要です。

 

しいたけの発生と収穫

しいたけは、十分にしいたけ菌がホダ木に蔓延し、ホダ化の熟度が適切な段階になり、適温と適度な水分でホダ木に原基ができます。

その後、しいたけが発生する条件)温度、浸水打撲など)が揃えば、しいたけが生えてきます。これらの要因は、種菌の性質によって変わります。

生しいたけ用の品種 : 普通は、ホダ木の浸水発生を行います。ホダ木を浸水をした後、普通1~2週間で収穫できるので、計画的なしいたけの収穫に向いています。が、ホダ木の浸水・ホダ木を収穫用ハウスに並べる・ホダ木を収穫ハウスから休養場所へ移動し、ホダ木を休養させる、などの手間がかかります。

乾椎茸用品種 : 生しいたけのようにホダ木を浸水することは稀です。なので、浸水・並べる・片づける、の手間が省けます。収穫時期が主に、春(桜の咲く頃)と秋になります。収穫は普通、露地で行うので、その時期は天候に左右されやすくなります。

しいたけの品質を上げるため、あるいは、収穫時期のコントロールが目的で、半・施設栽培をする場合もあります。

 

ホダ木の休養

しいたけを収穫した後のホダ木は、1~2カ月間(浸水回数によってはそれ以上)休養させます。この間、品種に適した温度と水分のコントロールを行います。休養期間は、しいたけの収穫回数や気温によっても変わります。

 

しいたけの害菌、雑菌

しいたけ菌やホダ木にはいろいろな害菌や雑菌がつきます。

しいたけ菌への悪影響が少ない雑菌

アオカビ

胴枯れ菌

ゴムタケ

しいたけへの悪影響が大きい害菌

ラクティア

トリコデルマ

クロコブタケ

ムラサキほこカビ

 

しいたけの害虫

ナメクジ

シイタケオオヒロズコガ(の幼虫)

 

使用済みのホダ木

浸水発生を数回繰り返した生しいたけ用のホダ木は、一定期間が経過すると、きのこが生えにくくなってたり、生えても小さくて販売に適さなくなります。あるいは、ホダ木のしいたけ菌が死んでしまうこともあります。こうなったら、そのホダ木は廃棄します。

とは言っても、使用済みホダ木は貴重なバイオマスです。

バイオマス暖房機の燃料など、いろいろ用途があるので、有効利用を考えた方が良いかもしれません。