しいたけ用語辞典
下記に記載したものは、あくまで一般論です。例外もありますので、ご了承ください。
ア行
- 秋子
- 「秋子」と言っても女性の名前ではありません。秋に収穫したしいたけを、露地栽培、特に乾ししいたけでは、このように呼びます。
- 「春子」に対する呼び名です。
- 「秋子」は「春子」と比べて軽いしいたけが多い傾向があります。しいたけの品質をイメージしやすくなるように、このように名前を使い分けしたのかもしれません。
- 雨子
- 「雨子」は、小職は「あまご」と読むことが多いのですが、他ではどうでしょうか?これも女性の名前ではありません。
- 露地栽培のしいたけは、雨除けなどをしなければ、降雨の際、しいたけに雨が当たります。雨水を含んだしいたけをこのように呼びます。
- 多くの生き物の同じように、しいたけ子実体も大半が水です。しいたけ子実体の重量の90%前後が水であると言われています。一方で、しいたけ子実体は水分を含みやすく、また、反対に乾きやすい性質もあります。子実体に雨が当たると、雨を含んで、子実体の重さが2倍くらいになることもあります。増えた重さはほとんどが雨水の重さです。これが、雨子です。
- 井桁伏せ(井桁積み)
- 井桁伏せとは本伏せの方法のひとつで、地面に台を置いて、その上にホダ木を井桁のように積み重ねる方法です。伏込場所の乾燥具合や品種、原木の水分量にも因りますが、井桁の高さは1m以内、また、井桁と言っても1段に3~5本づつホダ木を組む場合もあります。
- ヨロイ伏せよりも、単位面積当たりのホダ木本数が多く伏せ込むことができますが、走り子が収穫しにくい事、下に台を置くのでホダ木が地面に付くことが無く、ヨロイ伏せよりも乾燥しやすい事などの特徴があります。
- 一方で、ホダ木を地面に付けないことから、ヨロイ伏せと比べ、連作障害に強いという考え方があります。また、ホダ木が生木の時は、ホダ木を乾燥させるため、ヨロイ伏せではなく、井桁伏せをすることがあります。
か行
- 褐変
- しいたけ栽培の場合、これは普通、植菌したしいたけ菌がホダ木の外に出てきて、始めは白いのですが、後に褐色になり、その状態を「褐変」と呼びます。
- ホダ木の木口や植穴(成型菌や駒菌の場合)から噴き出たしいたけ菌が、適温と敵失の状態が続くとこの「褐変」が起ります。
- 普通はホダ木の中で生育するしいたけ菌が外に飛び出すくらいですから、しいたけ菌が元気な証拠です。
- 仮伏せ
- 植菌した後、ホダ木を適温適湿で管理することを「仮伏せ」と言います。植菌したホダ木を棒積みなどの密な状態にして、その上にビニールや遮光資材でホダ木を覆います。この期間にしいたけ種菌を原木に活着・伸長させます。
- 期間は、周囲の気温にも因りますが、1~2か月くらいでしょうか。木口に菌紋がある程度出たら、本伏せに移行します。あまり長く仮伏せを続けすぎると、菌紋がベッタリ張り付き、ホダ木とホダ木がくっついてしまう事があるので、その前に、覆いを取り去り、通気を良くします。
- 寒子
- 「寒子」と書いて「かんご」と読みます。 原木しいたけ栽培では、収穫する時期よって、しいたけを「**子」と呼び分けますが、その一つです。他に、「春子」、「秋子」、「藤子」、「走り子」などがあります。
- これは、特に乾し椎茸栽培で見られます。真冬の寒い時期に、その寒さが引き金となってホダ木からしいたけが芽切る場合があります。寒い時期なので「寒子」と呼びます。
- この時期は、厳寒期なので、せっかくしいたけが芽切っても、この時期は厳寒期なので、何もしないと育たないことが多いです。そこで、芽切ったしいたけに袋をかけたり、収穫ハウスに芽切ったホダ木を持ち込んで収穫するなどの対策をとる場合があります。
- ちなみに、この寒子は美味しいです。肉質が締まっていて、正に「あわび」の食感そのもの、(いやそれ以上か???)
- 菌紋
- 「菌紋」とは、しいたけホダ木の木口に見えるしいたけの菌糸の事を言います。初めは白色ですが、その後、適切な管理をすると「褐変」と言って、しいたけ菌が褐色に変わります。ホダ木作りが順調に進んでいる証拠です。
- 仮伏せがうまく言った場合は、ほとんどのホダ木に菌紋が出てきます。本伏せの時にも、ホダ場の環境や水分状態で、さらに菌紋が増えます。
- 原木しいたけ栽培では、植菌したしいたけ菌はホダ木の樹皮の下にあ直接は見ることができません。この菌紋の形状などは、生産者がホダ木の中のしいたけ菌の状態やホダ木の水分量を推測する重要な情報となります。
- 原基(始原体)
- ホダ木の樹皮や種菌植穴にできるしいたけの赤ちゃんのことを「原基」または「始原体」と呼びます。
- 原木に植菌した後、適切な管理を行うと、品種の特性に応じた時期に適度の温度と水分が加わると、この「原基」ができます。
- 原基が出来始める時期は、品種や栽培方法、種菌の種類によって全く違います。種菌の種類では、駒菌(遅い)→成型菌→(早い)オガ菌となります。
- この原基が、適当な温度と水分、そして浸水打撲や低温または温度低下のような刺激が加わることで成長し、しいたけ(の子実体)になります。
- 原木しいたけ
- 原木栽培のしいたけを略して「原木しいたけ」と呼びます。これに対する言葉が「菌床しいたけ」です。原木しいたけの特徴は、「原木しいたけとは」のページをご覧ください。
さ行
- しいたけの原産地表示
- しいたけの場合、2022年10月から原産地表示が変わりました。9月までは「収穫地」を表示していましたが、10月からは「植菌地」を表示します。収穫地の表記は任意です。
- 変更の背景としては、「外国で植菌した菌床を日本に輸入し、日本でしいたけを収穫した」しいたけが、今までは、日本産と販売されていたことがあったようです。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。「国産シイタケ」の多くは中国栽培、本当の栽培地を見分ける簡単な方法とは」
- または、林野庁のページ食品表示基準Q&Aの改正について(しいたけの原産地表示):林野庁 (maff.go.jp)
- しいたけの歴史
- しいたけの歴史はかなり古そうです。
- 白戸三平氏の名作「カムイ伝」には、江戸時代にしいたけ栽培をしていた記述があります。
- 乾椎茸は、遅くとも、江戸時代の頃から中国へ輸出されていたそうです。
- 原木しいたけは美味しいのですが、手間がかかり重労働です。これに代わる技術として、40年以上前から「菌床栽培」が研究されてきました。40年前の菌床しいたけは品質も悪く、広く普及はしなかったのですが、その後、急速な技術の進展があり、2019年には、日本の生しいたけの生産量の92.3%を占めるほどになりました。
- 2011年に東日本大震災があり、その時の東京電力原子力発電所事故による放射性物質被害で、東日本の原木しいたけは甚大な被害を受けました。
- (しいたけの)子実体
- (しいたけ子実体とは、まさにスーパーなどで売られている、キノコとしてのしいたけそのものを指します。
- しいたけは、きのこの部分と、ホダ木の中に隠れた見えないしいたけ菌糸体と二つに分けられますが、特にきのこの部分を指すときに使います。
- (しいたけの)施設栽培
- 文字通り、施設の中でしいたけを栽培するものです。が、少しややこしいです。
- 言葉の定義があるわけではありませんが、無理やり説明しますと、
- 露地栽培 : ホダ木作りから収穫まで、全て露地のみで行う栽培方法。コストが最も低い。
- (半)施設栽培 : ホダ木作り(の一部)は露地で行い、休養期間は施設や露地で行い、収穫などを施設で行う栽培。コストやメリットは、露地栽培と完全施設栽培の中間となります。
- 完全施設栽培 : ホダ木作りから収穫まで、全てを施設の中で行う栽培方式。コストが最も高いが、集約的栽培ができることのメリットがある。
- しいたけはもともとは森林の中で自生するものなので、いわゆる露地栽培が適しているのかもしれません。
- しかし、降雨に当たるとしいたけは傷みやすく、日持ちが悪くなります。従って、収穫は専用のビニールハウス内で行う場合が良くあります。あるいは、収穫前のしいたけ子実体に雨除けするなども、ある意味、半施設栽培でしょうか。
- また、ホダ木作りも露地栽培でも全く問題はないのですが、多かれ少なかれ天候の影響は受けやすい事や、多大な面積が必要となります。施設栽培の方が管理が臨機応変にしやすい事や集約栽培ができることなどから、施設で行う方法もあります。
- 自然子
- 「自然子」とは、特にホダ木への発生操作をしないで、自然にホダ木からしいたけが生えてきた場合のしいたけ子実体を指します。反対語として「作り子」が使われる場合もあります。冬菌の場合、この発生型が多いです。
- 「春子」「秋子」「藤子」の総称でもあります。
- 自然子の特徴は、ある決まった季節に、(特に発生操作が無くても)しいたけが大量に収穫できることです。当農園でも、原発事故前は、この大発生した自然子を1日中収穫した時も良くありました。それくらい、集中発生することがあります。
- しいたけの収穫時期のコントロールが難しく、計画的な収穫と販売が必要な場合の生しいたけ栽培では不向きです。
- 乾ししいたけ栽培に多く、生しいたけは浸水発生型が多いです。
- 死物寄生菌
- しいたけは死物寄生菌と呼ばれる種類の菌類です。文字通り、枯れた木に蔓延シュル種類の菌類をこのように呼びます。これに対する言葉に「活物共生菌」があり、マツタケが有名です。
- しいたけは死物寄生菌なので、原木が生きていると蔓延が遅くなるまたは蔓延できません。
- ところが、原木しいたけ栽培では、原木を伐採するとき、必ず枯れていない木を伐採して植菌しなければなりません。枯れている木を伐採して植菌すると必ず失敗します。(細かい話をすると、枯れた木への植菌が不可能ではないのですが、ここでは割愛します。)
- 原木を伐採した後、「枝干し」や「葉干し」と言う方法で、伐採した原木を枯らしてから(「原木の水を抜く」という表現を使うことが多いです)植菌する方法があります。これは生きている原木を伐採したので原木の内部は無菌状態、そして、植菌したしいたけ菌の蔓延がスムーズにいくように、原木の細胞を枯死させた・と言う意味があり、しいたけ菌が死物寄生菌であることを利用しています。
- (しいたけの)遮光資材
- しいたけは本来は林内で生育するものです。季節にも因りますが直射日光が当たるとしいホダ木の樹皮があるとはいえ、しいたけ菌が高温障害で死んでしまうことが多々あります。これを防ぐため、人工ホダ場などでホダ木を直射日光から守るために、ホダ木の上方に覆う資材を遮光資材と言います。
- 遮光ネット、寒冷紗、よしず、枝葉などいろいろ種類があります。
- 直射日光が当たってしいたけ菌が死ぬ理由は、高温障害なので、遮光資材の種類や設置方法などは季節によっても違い、気温の低い冬は直射日光がホダ木に当たってもホダ木は死にませんので、遮光資材が不要の季節があります。
- 一方で真夏は、地域によっては、二重の遮光資材が必要な場合もあります。
- (ホダ木の)熟度
- ホダ木からしいたけが発生するためには、しいたけ菌がホダ木の中で、辺材や内樹皮に十分蔓延し、かつ、ホダ木内の木の細胞を分解していなければなりません。この時の、しいたけ菌がホダ木内部の材などを十分に分解・吸収しているかどうかを判断する言葉として、ホダ木の「熟度」と言う言葉が使われます。
- 品種や種菌の種類(オガ・封蝋か、成型菌か、駒菌か)にも因りますが、ホダ木の熟度が甘い場合に、無理に、発生操作をすると「ボウズ」と呼ばれる、足だけのきのこが発生してしまう場合があります。
- また、品種によっては、ホダ木熟度が甘い時期から新ホダの発生を始めると、ホダ木の生涯収穫量が減る場合があります。
- 種菌
- 「種菌」と言う言い方をしますが、しいたけ栽培で実際に使う種菌は、「種」ではなく「苗」のようなものです。
- 原木しいたけの場合、種菌は胞子ではなく、苗なので植菌をする際はクリーンルームは必要ないものの、過乾燥などに気を付けて、丁寧に扱わないと種菌が死んでしまいます。
- 種菌の種類には、駒菌(木片駒)、成型菌、オガ菌などがあります。品種の禿頭を考慮しなければ、しいたけが初めて収穫できる時期は、駒菌(木片駒)(遅い)→成型菌→(早い)オガ菌となります。
- 駒菌(木片駒)は乾椎茸栽培に多く、オガ菌は生しいたけ栽培に多いです。
- 成型菌 ↓
- 使用済みホダ木を利用したバイオマス暖房
- しいたけ栽培は、週年栽培ができます。ただし、冬季にしいたけを収穫するには、ビニールハウスとその暖房が必要です。
- 暖房にはいくつかの種類があります。主なものでは、灯油(重油)暖房機(つまり化石燃料を使います)と(原木しいたけ栽培では)使用済みホダ木を利用したバイオマス暖房機があります。他にもヒートポンプや特殊な暖房方法もありますが、ここでは割愛します。
- 実は、原木しいたけ生産者では、このバイオマス暖房機を利用している生産者が多いのです。背景としては、1970年代のオイルショックがあります。この時に暴騰した化石燃料に代わり、使用済みホダ木を燃料としたバイオマス暖房機が普及しました。しかし、その後、この暖房機が2次燃焼のできない旧式が多く、排煙の問題(白い煙がたくさん出る)があったことから、下火になりました。
- 植菌
- 「植菌」とは、しいたけの原木に穴をあけて、その中にしいたけ種菌を入れることを言います。稲作で言えば田植え、畑作で言えば定植に当たります。つまり、播種ではありません。
- 原木しいたけの場合、この作業は、特に滅菌などをせず、種菌も普通に手で触って行います。一方で、菌床栽培の場合は、クリーンルームのような場所で行うようです。この違いは、作業の面からも、コスト面からも、結構大きいです。また、不思議な点でもあります。
- 上記2.の理由として、菌床栽培の培地は滅菌処理をしているものを使うので、培地に雑菌が入らないように行うのに対し、原木栽培では、生きている原木に穴をあけるだけで滅菌処理をしないので、その必要性が薄いことが考えられます。
- 原木栽培に使う原木は生きている木を伐採しますが、その理由もここにあります。つまり、穴をあけた原木は、その部分は原木が生きているので無菌状態に近いと言えます。
- 原木に穴をあけたとき、その穴が褐色の場合があります。この場合、原木の辺材部が枯れ始めたことを意味します。駒菌や成型菌であれば、植菌後散水することは効果が大きいので、散水さえすれば問題は少なく、むしろ、良いホダ木を作るチャンスとも言えます。
- 同じようでも、もし、伐採時に枯れていた木に植菌すると、その枯れ木の材の中にすでに雑菌が入っていることがほとんどなので、しいたけ菌の蔓延する余地がありません。従って、枯れ木に植菌すると必ず失敗します。
- 浸水(作業)
- しいたけ栽培で、特に、生しいたけでは、この「浸水(作業)」を行います。これは、しいたけを発生させるため、ホダ木を水槽に6時間~24時間ほど浸水する作業を言います。
- 秋に新ホダを浸水する場合、しいたけの発生量が多すぎて、子実体が小さくなってしまう場合があります。この場合、ホダ場から水槽にホダ木を移動した後、通常はすぐにホダ木を浸水しますが、子実体の芽数を少なくするため、故意に、移動後1~2時間後に浸水する場合もあります。
- ホダ木を浸水すると、暖かい時期で浸水後約1週間、寒い時期で2~3週間くらいで、しいたけが収穫できるようになります。(当農園のしいたけ栽培セットは、この浸水を行った後のホダ木を送付します)
- この浸水作業には、一つ、需要なことがあります。浸水の際、ホダ木に物理的刺激を与えることです。具体的には、ホダ木とホダ木をぶつける程度(=つまり、普通にホダ木を鉄枠などに移す作業自体の刺激で十分なことが多い)で良いので、普段の作業ではあまり意識しなくても良いのです。しかし、ホダ木とホダ木をぶつけるとホダ木の樹皮が剥がれることがあり、こうなると剥がれた部分からはしいたけが発生しにくくなるので、樹皮は守らねばなりません、そのために物理的刺激を弱めると、そのことがしいたけの発生を減少させる場合がありますので、要注意です。
- 浸水発生
- 「浸水発生」とは「自然子」の発生に対する言葉です。自然子が気温や降水など自然現象がきっかけでしいたけを収穫するのに対し、「浸水発生」は上記の「浸水作業」を行うことでしいたけの発生と収穫を行います。
- 浸水発生は、自然発生と比べ、浸水作業だけではなく、浸水したホダ木を並べる作業、および収穫後のホダ木を片付ける作業の手間が生じるので、人件費のコストがかなり多く発生します。
- その一方で、自然子よりもしいたけ収穫時期のコントロールがしやすいため、計画的に収穫量を考える必要の高い生しいたけ栽培でよく使われます。
- 新ホダ
- 植菌した後、最初にしいたけの発生をする場合のホダ木を「新ホダ」と呼びます。「古ホダ」に対する言葉です。
- 普通は、品質、収穫量ともに最も良いことが多いです。
- ただし、ホダ木の熟度が悪い時などには「ボウズ」と呼ばれる、キノコと形をしていたいしいたけ子実体が発生することが、稀にあります。
- ソーラーシェアリング
- ソーラーシェアリングとは、畑や田んぼの上に太陽光パネルを設置して発電し、その下で農作物を栽培するよ方法です。メリットは、農業と発電を同時に行えること、土地の固定資産税が、通常の野立て発電よりも低い事、デメリットは、野立ての太陽光発電設備とは違い太陽光パネルの高さを、下にトラクターなど農作業用機械が入れる高さに設置しなければならないので、設備コストが多大になること、各種届け出が多い事、ソーラーシェアリングの下での農産物の収穫量が一定以上でなければならないなどの縛りがあること・などがあります。
- 原木しいたけの場合、農地で、人工ホダ場の上に太陽光パネルを設置して、その下で原木しいたけ栽培を行うと、所定の手続きを経れば、ソーラーシェアリングとして認められます。原木しいたけ栽培は、もともと、林内で行うものであり、これを農地で行う場合は、「人工ホダ場」と言って上部に遮光資材を設置する必要があるので、その遮光資材が太陽光パネルになるので相性が良いと考えられます。
- 一方で、近年ではFIT単価が下がっていますので、野立てと比べて初期の設備投資の大きいソーラーシェアリングは、経営的には難しくなっています。
- 成型駒の植菌作業 ↓
た行
- 地伏
- 「地伏」と書いて「ぢぶせ」と読みます。これは、ホダ木の本伏せの際、ホダ木が過乾燥気味の場合に、地面に接するようにホダ木を管理することです。
- ホダ木を地面に接するように置くと地面から蒸発する水分で、ホダ木の過乾燥を防ぎます。これはかなり効果の高い方法です。
- 散水設備のあるホダ場であれば、ホダ木の過乾燥の際、散水すれば良い事が多いのですが、露地栽培で林内にホダ木を置いた場合、散水設備が無い場合があります。このような場合、地伏が効果的です。
- ただし、1回目の発生や、自然子の発生しやすい品種の場合、適切な時期に元の伏込方法に戻さないと、ホダ木が汚れる、自然子が発生しても販売できないような品質になるなどの欠点があります。
- 天地返し
- 本伏せを行った後、一定期間が経過しホダ木の上下で水分状態などに乖離がでたら、「天地返し」を行います。ふつうは梅雨の頃と秋雨の頃に行いますが、天気や品種やホダ木の状態によって、行う時期や回数を変えます。
- 具体的には、ホダ木の上下と裏表を反対にします。
- その効果としては、①ホダ木の上下裏表を反対にすることによる、水分環境の均一化。②ホダ木に物理的刺激を与えることによるしいたけ菌の活性化があります。
- ホダ木が生の状態の時 → 天地返しをすることにより、しいたけ菌の活性化と乾いた環境を作ることによって、良いホダ木を作ります。
- ホダ木が乾いている場合 → 天地返しをする際、乾いたホダ木を地伏にします。
な行
- 夏菌
- 「夏菌」とは、しいたけの品種を、しいたけ子実体の発生時期で分類するときに使う言葉で、文字通り暖かい時期にしいたけが発生します。「冬菌」の反対語です。
- 夏菌と言う名前の通り、温かい~暑いときの方がしいたけ子実体が発生しやすいのですが、では、冬場に発生できないかと言えば、そうとは限りません。品種によって、あるいは、栽培の工夫で、そして暖房すれば、1~2回目発生くらいまでは、冬場にも発生することは良くあります。
- 「3回目以降の発生は、冬では難しい」くらいに考えるのが適切かもしれません。
- 農薬不使用
- 原木栽培のしいたけは農薬を使わずに栽培する農家が多いです。これは、農薬を使わなくでも、栽培を工夫すれば、病害虫を防ぐことができるからです。とは言っても、完全に防ぐのは難しく、多かれ少なかれ病害虫は発生します。
- 小職は理由をよく知らないのですが、なぜか「無農薬」と言う表記はご法度で、「栽培期間中:農薬不使用」と書くのだそうです。
- では、病害虫が発生したらどうするのか? 時と場合によりますが、赤橋農園では、
- ホダ木の場合 → 重症の害菌が出た場合は、そのホダ木をホダ場から取り除きます。軽症の雑菌の場合は、その雑菌に応じた管理を行い、被害を最小限に抑えます。
- しいたけの場合 → しいたけ子実体にも、稀に、害虫が付きます。基本的には害虫のつかない環境にして、害虫を無くします。病気になったしいたけ子実体は、残念ながら廃棄します。
は行
- 走り子
- 走り子とは聞きなれない単語ですが、これは、しいたけ栽培で、ホダ木が成熟した後に本格的な発生を迎える前に、生産者が予期しない時期に、降雨や散水、その他の要因で発生するキノコの事を指します。
- きのことしてはもちろん食べられるので、収穫量が増えるとも言えますが、反面、走り子が出る時期は秋が多いので、害虫に食害される場合も多々あります。
- 発生操作
- 「発生操作」とはホダ木からのしいたけの発生を促すための仕事の総称です。
- 「ホダ木を打撲浸水(ホダ木を浸水する前に、ホダ木どうしを軽くぶつけるなどの物理的刺激が加わるように浸水)すること」が最も多く行われます。一方で、他にも品種や発生時期によって、ホダ木の天地返しや散水などでも、しいたけの発生がコントロールできる場合もあります。
- ホダ木を水に浸水する時間は、品種や浸水回数などで違います。通常は6時間~24時間くらいです。48時間以上浸水すると、ホダ木が死ぬことがあります。
- ホダ木を浸水する場合、水の温度は、年間を通じて20℃くらいが適温です。夏には、20℃の水温は冷たいので低温刺激になりますし、冬は寒い時期なので20℃の水温は暖かいことになり、しいたけの発生に役立ちます。
- 春子
- 「春子」と言っても女性の名前ではありません。露地栽培で、春に収穫したしいたけをこう呼びます。
- 秋に収穫したしいたけ「秋子」に対する言葉です。
- 藤子
- 「藤子」と言っても、女性の名前ではありません。露地栽培で、藤の花が咲く頃に収穫したしいたけを、このように呼びます。
- しかし、最近ではあまり聞かなくなったような感じがします。
- (ホダ木への)物理的刺激
- ホダ木への「物理的刺激」とは、堅苦しい言葉ですが、他に、適切な言葉が無いので、本稿では、この言い方をします。文字通り、ホダ木を他のホダ木などにぶつけることを言います。
- ホダ木の浸水時に、これを行うことが重要です。品種や浸水回数によっては、物理的刺激が少ないと発生量が減る場合があります。以前は、「打撲浸水」と言う言葉を使っていました。
- 本伏せや天地返しをした場合の物理的刺激も重要です。特に、ホダ木が生木の時(適正な水分量よりも多いとき)に、天候や気温、品種特性を考慮して、適切な時期に天地返しをすることによりホダ木に物理的刺激が加わわること、および、同時にホダ木の水分量が均一化されることの相乗効果で、しいたけ菌の伸長が促進される場合があります。
- 冬菌
- 「冬菌」とは「夏菌」に対する言葉で、しいたけの品種をしいたけ子実体が発生する時期で分類する場合に使う言葉です。文字通り、冬に発生しやすい品種の事を指します。
- 例外はありますが、秋と春に自然子が生える品種が多いので、乾しいたけ栽培には、冬菌を使うのが普通です。
- 夏菌は、工夫すれば冬にもしいたけを発生させることが可能ですが、反対に冬菌を夏に発生させることは、まずありません。理由は二つあります一つは、かなり工夫しないとしいたけ子実体が生えないこと。もう一つは、仮に子実体が生えても、品質が悪いことが多い事です。
- 冬菌が夏に生える面白い事例としては「冬菌のホダ木に、夏、雷が落ちらたら、しいたけが大発生した」という有名な逸話があります。この事実を基に、電気によるしいたけ発生量増加の研究は、少なくとも30年以上前からされているようです。原因が、電流なのか、電圧なのか? 最近では「音」の効果と言う研究もあるようです。
- 棒積み
- ホダ木や原木の管理の一つの方法で、ホダ木や原木を横に密に積むことを言います。
- 単位面積当たりの収容本数が多く、作業が他と比べて安易です。
- 仮伏せやホダ木の休養の時にこの方法が使われます。
- ホダ木
- しいたけ栽培用の原木にしいたけ種菌を植え付けたものを「ホダ木」と言います。漢字では「榾木」と書きます。
- 細かい事を言うと、原木に植菌した後、何時までが原木と呼び、何時からホダ木と呼ぶから決まっていません。植菌後一定期間が経過した後、しいたけ菌がある程度蔓延した時からホダ木と呼ぶ場合もありますし、しいたけが発生する直前のものをホダ木と呼ぶ場合もあります。
- 本サイトでは、原木にしいたけ菌を植菌したものを「ホダ木」と記載しています。
- 本伏せ
- 仮伏せを行った後、しいたけ菌がある程度伸長して外界の環境変化に耐えられるようになったら、本伏せに移行します。
- 具体的には、それまで密であったホダ木とホダ木の間隔を空けて、通気をよくします。伏せ込み方には、「ヨロイ伏」「井桁積み」「ムカデ伏」などがあります。
- 露地で行う場合と、施設内で行う場合と2種類あり、施設内の場合も、「人工ホダ場」と「ビニールハウス(冬に保温できる)」とあります。
- もし、仮伏せの状態のまま管理を続けると、場合によっては、ホダ木から萌芽したり、木口からカルスが発生したり、あるいは、雑菌が繁殖しやすくなります。
- ホダ木が生木の場合、雨除けなどを行うこともあります。
ま行
- ムカデ伏せ
- ムカデ伏せとは、本伏せの方法の一つです。ホダ木を漢字の「人」のような状態に置いていく方法で、ホダ木をたくさん並べるとホダ木がムカデの足のように見えるので、この名前が付いたものと思われます。
- 他の伏込み方法と比べ、単位面積当たりのホダ木の本数が最も少ないです。従って、この方法はあまり用いられません。ホダ木が太すぎる場合、作業が楽なので、この方法で伏せ込むことがあります。 ↓ ムカデ伏
- 芽数
- 1回の収穫時期で、ホダ木から発生したしいたけ子実体の数を「芽数」と呼びます。
- ホダ木の芽数は、品種やその発生時期、発生回数でかなり違ってきます。多い場合には、1回の発生で数十個ものしいたけが生える場合もありますが、少ない場合、ゼロ個と言う場合もあります。
や行
- 輸入菌棒
- 輸入菌棒とは、外国(主に中国)で「菌棒」と呼ばれる菌床培地に植菌し、ある期間?中国で培養し、その後、日本に輸入し、しいたけを日本で収穫する方法に使われる菌床の事を言います。
- このように中国ので植菌し、また栽培履歴があるしたしいたけが「日本産」として販売されるため、問題となっていました。
- 数年前から増え始め、最近では生しいたけ販売量の16%以上がこの輸入菌棒で収穫したしいたけであると言われています。
- このような場合でも、原産地を正しく表示するため2022年10月から、しいたけの原産地表示は「収穫地」ではなく、「植菌地」を記載することとなりました。(収穫地を記載するのは任意)
- ヨロイ伏
- 本伏せの伏せ込み方の一つの方法です。
- ホダ木の片方の木口が地面に付いているので、比較的乾燥にも強く、また雨が多すぎる場合の対応策も取りやすく、万能型の伏せ込み方です。
- 一方で、ホダ木10,000本を伏せ込むには10aくらいの面積が必要なので、広い土地が必要になります。
- この方式は、ホダ木の片方の木口を地面に付けるので、以前は連作障害の懸念から、一度使用した場所では一定期間再使用しないということが言われていました。しかし、近年では、その連作障害の懸念は低いという考え方も出ています。
ら行
- 露地栽培 → 「施設栽培」の項をご覧ください。